京都は和風なものばかりだと思われがちですが、実は明治から昭和初期にかけての美しい近代建築が沢山残されているんです。
そんな中には老朽化や耐震問題で入れない建物も。このコーナーではそんな京都の知られざる近代建築をご紹介していきます。
フランス製ステンドグラスが美しい「カトリック宮津教会」
大雪が降った翌日の晴れた2月の上旬、宮津市役所のすぐ近くにある「洗礼者聖ヨハネ天主堂 カトリック宮津教会」を訪れました。実は最近まで毎週、教会内で礼拝が行われていたのですが、ファサード老朽化による修復検討中のため、現在は教会内でのミサ、見学は行っていないとのこと。
今回、特別にお許しを得て中を見せていただくことができました。
担当司祭の野田安則神父さまと信徒・松﨑政好さんにご案内いただき、中を見せていただきました。宮津教会は明治29年にパリ外国宣教会から派遣されたフランス人の神父・ルイ・ルラーブ神父が建設した教会。
建築当時の建物を、現役で使用している木造の教会としては最も古いものの一つです。
中に一歩、足を踏み入れた途端、あまりの素晴らしさに圧倒!
こちらはロマネスク様式の中でも三廊式パジリカ型の小さな教会ですが、内部は美しい木造。しかも畳が敷いてあるのです。というのも「ルラーブ神父の『日本のものを大切にしたい』という想いから、日本のものを取り入れて建てられたそうです」と松﨑さん。
ゆえにヨーロッパ風の建築なのですが、よく見ると随所に日本のものが使われ、まさに和洋折衷。全国にもいくつか畳敷きの教会が残されていますが、建築当時の姿で残っているのは少ないのではないでしょうか。
教会堂と床を照らす色とりどりのステンドグラス
中に入って一番印象的なのが、壁にはめられたステンドグラス。これらは教会をたてた時にルイ・ルラーブ神父がフランスから取り寄せたものだそうで松﨑さんによると現在ではもう、フランスでもこの技法を使ったステンドグラスは無いのだとか。
陽が入ると中央の通路や畳にステンドグラスが当たって、きれい! 太陽の傾きと共にステングラスの映る場所が変わり、不思議な神々しさがあります。
さらに面白いのが窓の立て付け。ヨーロッパでは両開き窓(観音開き)が主ですが、ここは日本。ということで引き戸になっているのです。この、ちょっとアンバランスなところもこの建物の面白さ。
丹後のヒノキを使った柱や天井
天井は、こうもり天井とも呼ばれるアーチを描いたヴォールト天井。昭和2年に襲った丹後大震災でもびくともしなかったのだとか。設計はルラーブ神父ですが、建てたのは宮津の大工さんだそうで、その巧の技が感じられます。
天井も柱も寺社などの建築で使われるケヤキ。丹後のものを切り出したもので立派なもの。時代を経て艶やかに光っていました。その柱を支えるのは御影石。
後方は螺旋階段になっていて、上は聖歌隊が聖歌を歌うために設けられたスペースになっています。窓は大きな丸いステンドグラスが入っていました。
中央祭壇を見ると右手にはキリストを抱いたマリア様、左手はキリスト像を安置。共に創建当時からのもので、フランスから海を渡ってきたものだそうですよ。優しい色合いの美しい像でした。
また、こちらには文化財級のものも多くあり、このイコンは教皇ピオ9世(在位1846-1878)からカトリックのレテンプトール会に託されたイコンの複製なのだとか。マリア様の王冠には宝石も使われていました。
さらに壁を見ると「十字架の道行き」のエッチングが全部で14枚飾られていました。
「かつてバチカンの美術の専門家が教会を訪れた時に大変貴重なものと言われまして、現在はレプリカを展示しています」と松﨑さん。このような素晴らしいエッチングがあるなんて驚きです。
さらに案内いただき建物の裏手へ。裏とは思えないほどの美しさ! 下見板が貼られ白いペンキを塗った外観、ステンドグラスも後ろから見ると軽やかな美しさがありました。右手にあるのはクルミの木。ルラーブ神父ご自身が植えたのだそうです。歴史を感じますね。
文化財的価値の高い宮津教会。現在、外観は自由に見学することができるので、ぜひ訪れてみてください。
洗礼者聖ヨハネ天主堂 カトリック宮津教会
(カトリック丹後教会 宮津教会堂)
京都府宮津市宮本500
℡ 0772-22-3127