数々のとんち話を残している一休さん。少年時代の一休さんはアニメなどでお馴染みですが、大人になった一休さんのことって意外と知られていませんよね?
今回は、一休さんが晩年を過ごした酬恩庵一休寺(京田辺市)を徹底解剖!歴史や建築物、庭園の解説から一休寺ならではのグルメ、アート、イベント、御朱印、季節の風景まで、ギュッとまとめてご紹介します。
一休宗純禅師とは?
臨済宗大徳寺派の禅僧だった一休さん。正しい名は「一休宗純(いっきゅうそうじゅん)」といいます。室町時代の1394年、後小松天皇の皇子として生まれ、6歳で京都安国寺に出家。以来、一つの寺にとどまることなく転々とし、81歳のときに応仁の乱で荒廃した大徳寺を復興するために住持します。その後、ここ一休寺を再興し、晩年を過ごします。88歳で病没し、お墓(宗純王廟)は境内の一角に。
知る人ぞ知る!青もみじ&紅葉の名所
小鳥がさえずり、静寂に包まれた環境はまさに市中の山居、凜とした空気が漂います。裏山の豊かな土壌に恵まれた一休寺は、初夏は青もみじと苔が美しく生育します。
また秋になると、参道では真っ赤に紅葉したカエデが彩り、紅葉狩りも楽しめますよ。
近世禅宗寺院の姿を今に伝える!一休寺の歴史的建造物
まずは一休寺の歴史紹介
酬恩庵一休寺は、もとは大応国師によって草創された禅の道場で、妙勝寺というお寺が前身。一休禅師が63歳のときに応仁の乱で荒廃した妙勝寺を、室町幕府6代将軍足利義教の援助により復興します。恩師(宗祖)にむくいるという意味を込めて、「酬恩庵」と名づけました。
一休禅師が亡くなった後、戦国時代に再び荒廃してしまいますが、加賀藩2代藩主、前田利常が大阪の陣に向かう道中、荒れ果てた風景に心を痛め、復興したのが現在の伽藍(がらん)です。
方丈および玄関、法堂(はっとう)、庫裏(くり)、浴室、鐘楼、東司(とうす)は国の重要文化財に指定。国指定名勝の方丈庭園とともに、近世の禅宗寺院建築の様を今に伝える貴重な建造物が現存しています。
名庭と名画が見事な方丈
サツキの刈り込みが美しい枯山水庭園
方丈を囲むように、南、北、東に禅院枯山水庭園(名勝指定)が広がります。南庭は、波紋が美しい白砂で現した大海に、サツキの刈込みの島々が配され、なんともリズミカルで目にも楽しい空間。
こちらの北庭は、約2メートルにおよぶ巨石を配した蓬莱庭園(中国の想像上の楽園をイメージした庭)。松花堂昭乗、石川丈山、伏見の淀城修築に携わった佐川田喜六らの合作とされます。
戦国の乱世が終わり「寛永の文化」が花開いたころ、文化人同士の交流が深まったことで、この名庭も誕生したのだとか。
二条城の障壁画も手掛けた画壇のトップ!狩野探幽の水墨画
若い頃に手掛けた狩野派の絢爛豪華な画風とはうって変わって、狩野探幽49歳の作品はとっても詩情豊かで異国情緒を感じます。一休禅師がこよなく愛した梅も描かれているので、ぜひ探してみてください。
一休寺最古の建造物・本堂(法堂)
室町幕府6代将軍足利義教からの寄進により建立された本堂(法堂)は一休寺で最古の建造物。堂内には本尊釈迦如来坐像、文殊普賢菩薩像が安置されています。
現在の建物は二代目・開山堂
堂内には一休寺の前身となる妙勝寺を創建した大応国師の木像を安置しています。現在の建物は二代目にあたるもので、大正時代の改築。2021年、檜皮葺屋根の修繕をきっかけに、新たな文化財の在り方を提案する試みとして「チタンによる開山堂修繕プロジェクト」に取り組んでいます。
一休禅師の住まいにあたる虎丘庵 ※通常非公開
一休禅師の住まいとして使われていた虎丘庵(こきゅうあん)。二畳の水屋と、六畳、三畳からなる茶室造りの建物は、なんとも質素な佇まい。もとは京都・東山の麓にあったものを、応仁の乱を機に移築したものなんだとか。
また、虎丘庵庭園は室町時代の代表的な禅院枯山水の庭園。一休禅師の弟子にあたり、侘茶の祖といわれる村田珠光の作ともされています。
一休禅師が眠るお墓・宗純王廟
亡くなる6年前に作ったと伝わるお墓、宗純王廟(おうびょう)。宗純王廟の門には菊の御紋の透かし彫りが。一休禅師は天皇の皇子にあたるため、墓所は宮内庁が管理しています。
肖像画「一休禅師画像」は必見!宝物殿
寺宝を火災から守るために作られた宝物館。なかでも一休禅師の肖像画「一休禅師画像」は重要文化財に指定されており、必見です!
お寺グルメ「一休寺納豆」「善哉」
「善哉」の名付け親は一休禅師!イベントもあり
「善哉(ぜんざい)」の名付け親が、実は、一休禅師だったことはご存知でしょうか?初めて善哉を食べたときに「善哉此汁(よきかなこのしる)」と感想を言ったことが名の由来なんだとか。
ご住職こだわりの「善哉」は、香ばしく焼き上げた大きな焼き餅、ふっくらと丁寧に炊き上げた小豆がたまりません。お口直しに、一休寺納豆も添えられています。こちらは庫裏(写真下)売店でいただくことができます。
また一休寺では、1月1日生まれの一休禅師を偲んで、毎年1月の最終日曜日にイベント「一休善哉の日」を開催。参加者が新年の誓いの言葉を奉納した後、善哉の振る舞いがあります。
滋味あふれる味わいの京名物「一休寺納豆」はお土産にもおすすめ
「一休寺納豆」は一般的なネバネバ糸を引く納豆とは別物。味噌に似た風味で、深い旨味と香ばしい味わいが特徴。ご飯のお供や酒の肴として京都で親しまれてきた名物です。
最近ではスイーツのアクセントやお料理の隠し味としても重宝されています。
当時、肉を食べない僧の貴重なたんぱく源だったそうで、応仁の乱で飢えに苦しんでいた人に、一休禅師がその製法を伝授したことにはじまります。
なんと仕込みから完成まで製造に1年かかるんだとか。数百年に渡り一休寺で製造され、現在はお土産品として庫裏売店にて販売しています。
ひと味ちがった一休寺の授与品!御朱印・絵馬も
おしゃれかわいい作家もののストラップ&ブローチ。一休禅師だけでなく、トラや母上さま、新右衛門さんなど、思わず集めたくなっちゃいます。
一休禅師にちなんだ、ありがたい言葉を書いた御朱印の授与も。ちなみに「善哉」とは、とっても良い!と相手を称賛すること。
こちらは「一善、一年」と書かれた虎絵馬。自分の善きこと、そして誓いを絵馬に書き奉納。過去の自分を振り返り、その自分と向き合うことで、新たな目標を立てるよい機会にもなります。
ぜひ、一休寺で出合った一休禅師の言葉から、心豊かに自分らしく生きるヒントを見つけてください。
■■INFORMATION■■
酬恩庵一休寺
住所:京田辺市薪里ノ内102
電話:0774-62-0193
時間:9:00~17:00(宝物殿9:30~16:30)
料金:500円