白い壁におしゃれなチェアが配されたこちらは、なんと木造の元教会に作られたカフェレストラン。天井の高い店内には、こだわりのスピーカーからレコード盤のジャズ(これが、かなり良い音!)が流れ、薪ストーブの炎を見ながらワインと丹後の食材を使った料理が楽しめます。この教会カフェレストランの名は「GET ME TO THE CHURCH」、私を教会へ連れていって―。1月15日に綾部市にオープンしたばかりの今、話題のお店を訪れてきました。
昭和30年代に建築された木造教会がカフェレストランに
昨年、訪れた宮津カトリック教会しかり、京丹後には古い教会が数多くあります。綾部市にもやはりレトロな教会があり、写真の綾部カトリック教会もそのうちの一つ。現在は統廃合により教会として活用されていないのですが、この建物を愛する不動産屋さんの手で大切に保存され、コワーキングスペースとして活用されていました。それが、この1月にカフェレストランになったと聞き、これは!! ということで早速、ディナータイムに訪れてきました。
(左)玄関ドアの装飾もステキ (右)中央の白い十字架が印象的
それにしてもインテリアが楽しみ! 教会を活かしたカフェレストランというのだからゴシック風かな、それともウッディなのかな…など、あれこれイメージしていたのですが、これが良い意味で予想を裏切るステキさ!!
白い壁と高い天井を活かし、おしゃれな家具を配した、デザイナーズ家具店のような、おしゃれな友人宅のような、とにかくステキな空間。
どれも店主で料理人である宮野晋さんのコレクション。どの椅子に座ろうか悩んでしまいます。
さすが年代もののグロトリアン・スタンウェイ。細部までため息がでるほど美しい
店の一番奥、かつて祭壇があったステージに置かれたグランドピアノは、世界中のピアニストから絶大な信頼を得る、あのスタンウェイ。しかも1911年に製造されたグロトリアン・スタンウェイ(シューマンの妻で当時最高のピアニストの1人であったクララ・シューマンが愛用したことでも有名)。元々はドイツの教会で使われていたものだそうですが、縁あってカフェレストランのお客様がお貸ししてくださっているのだそうです。
店主は、蕎麦通たちをうならせた東京のアノ名店の?!
店名のGET ME TO THE CHURCHは文字通り「私を教会に連れていって」という意味
ところで料理人で店主の宮野晋さんの経歴もユニーク。実は元々、東京の出版社の編集者(しかも現在もコピーライターとしても活躍中しているんです!)。それが人との縁で料理人となり、さらに途中、イベントプロデュースのお仕事もするなどした後、紆余曲折あって(面白いエピソードが沢山あるのですが、今回は割愛)東京の阿佐ヶ谷にある、古民家風の趣のある蕎麦店「みや野」をオープン。「みや野」といえば有名雑誌などでも紹介された蕎麦通たちをうならせてきた名店! そんな宮野さんがなぜ綾部へ?しかも教会でカフェレストランを?
「元々、みや野では鱧やグジなど京都の食材を多く使っていたので、いつか京都で自分の料理を表現したいなと思っていたんです」。宮野さんが料理を作る上でもっとも大事にしているのが水、オーガニックの野菜、天然の魚介にジビエ。昨年、京都市内の店舗用物件を見に来たのですが、それらが手に入り、かつロケーションの良い物件がなかったので、それならば、いっそのこと京都市から車で通える距離にある綾部市の古民家に住んで畑を営み、海や山の幸に水を積み込んで京都市内へ通うのはどうだろうと綾部市の物件を見に来たのです。
古いジャズレコードが。上右のサインは綾部市出身のドラマーであり、デペッシュ・モード、ビョークの楽曲ではリミックスプロデューサーを務めた屋敷豪太さんのもの
そこで出会ったのが、綾部市の不動産店「原田商店」さん。社長さんと一日、物件を見てまわった帰り、予定していた電車まで時間があったので「あと一軒、僕の大好きな建物があるので見ていただけませんか?」と言って見せてくれたのが、この元綾部カトリック教会でした。実は、この教会、社長さんが子供の頃から憧れていた大好きな建物だったのですが、危うく取り壊される危機にあり、保存のために買い取りコワーキングスペースにしていたのだとか。そして、宮野さんに「ここをレストランにできたらなぁと思っているんです。誰か知り合いで、やってくれそうな人いません?」と言うではありませんか。宮野さんも「そんな面白いことなら、ぜひやらせてください!」と手を挙げ、なんと1か月後には綾部へ。何とも人との縁とタイミングは不思議で面白いなぁと思えるエピソードです。
宮野さんこだわりのスピーカー。音質が最高!
そんな縁でスタートしたGET ME TO THE CHURCHにメニュー表はありません。地元綾部の有機野菜に米、舞鶴や宮津の魚介、宮津の名猟師から分けてもらうジビエ、地元に湧く水を使った、おまかせ料理。ランチは日によります。(令和4年6月追記:現在は3,500円~4,000円ぐらい:仕入れ状況により前後/事前予約がおすすめ)夜は、しっかり食事を楽しみたい人から、ご飯を食べてからフラリと飲みに来る人もいるので、その日のメニューを伝え、好みのものを選ぶスタイル。ちなみにお値段例として、舞鶴産シラスのcheese toast 700円、宮津産イノシシの自家製ソーセージ2000円〜(重量によって変動)といった具合。
シラスのチーズトースト。パンの上にはシラス、ホウレンソウ、チーズを
例えば訪れた日のメニューは、サワラの棒寿司にシラスのチーズトースト、春菊の葛よせ、鹿肉の煮込み、イノシシのソーセージ、壬生菜のポタージュとった具合。メニュー表を見ながら選ぶのに慣れていると不安になるかもしれませんが、ご心配なく。食べたい量と気分を言えば、宮野さんがお腹の具合を見ながら料理を出してくれので安心。しかも、どれも間違いなく美味しいのです!
写真は目の前で皮を炙って供される「サワラの棒寿司」。サワラの脂と塩加減、香ばしい香り、ご飯の炊き具合とご飯に混ぜた綾部の実山椒のバランスが絶妙。宮野さんの料理をいただいていると、料理というのは、良い食材を使って美味しく調理することなんだなぁ…と思えてきます。
それから気になるお酒は、パリでも入手が難しいといわれる自然派ワインや自然派カルヴァドス(ブランデー)に日本酒。お酒を飲めない人は、無農薬のハーブティやしぼりたてのジュースにドイツのノンアルコールビールも用意。ドリンクは700円から。もちろんデザートもあります。
薪ストーブの横のソファーに身体を預け、美味しい料理とワインを楽しみつつ、こだわりのスピーカーから流れる70年前のレコード盤ジャズを聴いていると、もう最高。家に帰りたくない…ここに泊まっていきたいとさえ思えてきます。
「そんな方がいらっしゃるかと思い、今、不動産屋さんが急ピッチで古民家の宿を近くに作っているんです」と宮野さん。教会カフェでお料理を楽しんで、そのまま古民家の宿でくつろぐなんて最高! 宿のオープンも楽しみです。これから綾部市へ訪れる楽しみが1つ増えそうですね。
GET ME TO THE CHURCH
京都府綾部市新宮町6 綾部カトリック教会跡
℡ 080-1238-6477
営 12:00~14:00、17:00~22:00
土・日曜、祝日は12:00~22:00
休 月曜日
交 JR綾部駅から徒歩4分
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