乙訓(おとくに)地域と並んで京都の竹・タケノコの産地として知られる山城地域。こちらに「世界流しそうめん協会」なる団体があるとの情報を入手!ウケ狙いの学生サークル?それともキャッチーな名前を隠れ蓑にした悪の秘密結社?いやいや、実は本気で流しそうめんの魅力を発信している団体なんです。いったいどんな活動をしているのでしょうか。気になって夜も眠れないKYOTOSIDE編集部は、木津川市加茂町で作業中の会長・上田悠貴さんの元を訪れ、お話を伺いました!
世界流しそうめん協会会長・上田悠貴さんへインタビュー
会長・上田さんの流しそうめんデビューは“意外にも”遅かった
――上田さん、こんにちは!今日はよろしくお願いします!会長と聞いていたのでご年配の方を想像していましたが、お若くてびっくりしました!
上田さん(以下同):「世界流しそうめん協会」といっても、協会員は僕を含めて4~5名。メインで活動しているのは僕一人なんです(笑)。
――ということは、一人であれこれお忙しくされてるんですね。普段はどんな活動をされているんですか?
僕たちが目指しているのは、子どもから大人まで楽しめる流しそうめんを、もっと多くの方々に知ってもらうことなんです。具体的には、全国各地で流しそうめんをパッケージで提供する“出張流しそうめん”や、流しそうめんイベントの企画や監修などの普及啓発活動をしています。
――なるほど。流しそうめんって、子供だけじゃなく大人も童心に返って楽しめますもんね!上田さんはやっぱり、子供の頃から流しそうめんがお好きだったんですか?
実は、僕が流しそうめんを初めて体験したのは高校生くらいの頃だったんです。元々大阪に住んでいたんですけど、流しそうめんをする機会ってなかったんですよ。だから、まさか自分がここまで深く関わるとは想像もしてなかったですね(笑)。
“放置竹林の解消”が協会設立のきっかけに
――そんな上田さんがどうして”世界流しそうめん協会”を設立されたのでしょうか?
「流しそうめん協会」設立のお話に入る前に触れなければいけないのは、山城地域の放置竹林の問題です。山城地域は、竹や京タケノコの産地なんですが、生産者の高齢化などが原因で、今、放置竹林が増えていることが問題になっています。放置竹林は、イノシシなどの獣害や地滑りの原因にも繋がる深刻な課題。このことを知って何かお役に立てることはないかと、竹を使ったイベントを色々と企画しました。そのなかの1つが流しそうめんだったんです。
――なるほど。確かに流しそうめんは、竹をたくさん使いますもんね。
そうなんです。当時、僕は21歳くらいだったのかな。せっかく流しそうめんをするなら、世界一を目指そうって思って。無謀にもギネス記録に挑戦したんです。若さゆえの“ノリ”ですね(笑)
――なかなかノリだけで挑戦できないですよ!ちなみにギネス記録は達成できたんですか?
2009年に井手町でチャレンジしたんですけど、その時は失敗しました。でも、僕の活動を知って地域の方々がサポートしてくれるようになったんです。前回のチャレンジから2年後、同じ井手町で挑戦した時は見事に成功!ギネス認定されました。その時の経験を活かして、地域活性化のために何か貢献できないかと設立したのが、「世界流しそうめん協会」だったんです。
“出張流しそうめん”で国内を東奔西走!近年は海外へも!
――ギネス記録達成から、協会設立へ。流しそうめんといえばやはり夏なのだと思うのですが、この時期はほんとお忙しいですよね。
大変ありがたいことに、6月から”出張流しそうめん”の依頼をいただいて、この時期(取材は7月初旬)に入ると、毎週末日本全国のどこかでそうめんを流してます(笑)。
――“出張流しそうめん”では、具体的にどんなことをされるのですか?
規模が大きくなると参加される方に手伝ってもらうこともありますけど、会場の設営からそうめんを流すところまで、基本的には一人で全て行っています。地域の子供会はもちろんですが、商業施設で行う1000人規模のイベントにもお呼ばれされることもあります。ギネス記録の時に3km以上の経験をしたおかげで、大人数のイベントも対応できるようになりました。それに最近は、企業で行う社内イベントに行くこともあるんです。
――え!意外ですね!大人同士だと盛り上がりに欠けることはないですか?
いや、それが、結構盛り上がるんですよ。大人になってなかなか流しそうめんをする機会ってないからでしょうか。みなさんほんと子供のように楽しんでますよ。
――確かに、私も子供の頃に流しそうめんをした記憶がありますが、大人になってからは体験してないかも。この時期国内を東奔西走される上田さんですが、やはり協会名に“世界”と名乗っているだけに、目標は“海外”ですか?
元々協会名に“世界”と入れたのは、“面白そう”“ツッコまれそう”というノリだったんですけど、最近はシンガポールやニューヨーク、中国でイベントをさせていただく機会も増えたんです。僕らは当たり前のように流れてくるそうめんを食べてますけど、よく考えたら麺を流す文化って、世界中見渡してみてもなかなかないですもんね。海外の方にとってはとても新鮮でとても喜ばれてますよ!
――イベントの合間を見つけては、インターネットで販売されている地元の竹を使った流しそうめんグッズを作ったりもされているんですよね。ほんと、大忙しですね!
流しそうめんのオフシーズンも、会長は忙しかった
――国内だけでなく海外でも流しそうめんを普及されていますが、オフシーズンは何をされているんですか?
“出張流しそうめん”や様々なイベントにお呼ばれされるうちに、色々な人との出会いがありました。その流れで始まったのが“出張農園”です。学校や商業施設などに実際の畑を作って、収穫の模擬体験をしてもらいます。“食”への関心は高まってますが、実際なかなか収穫する機会ってないですよね。合わせて、旬の野菜を使った食育教室や野菜の販売会など、農業と食に触れあえるプランを用意しました。おかげさまで、こちらも問い合わせが増えている状況です。
――それは面白いですね!確かに、子供たちはもちろん、私たち大人もなかなか農作物を自分の手で収穫することってないですもんね。流しそうめんだけでなく、農業の魅力を発信されている上田さんの今後の目標は?
まずは、引き続き流しそうめんの魅力をより多くの人に知っていただくことが目標です。流しそうめんって簡単にできそうなイメージがありますけど、意外と難しいんです。そもそも、そうめんを流す竹がなかったり、竹があったとしても上手にそうめんを流すことができなかったり。難しくてあきらめてしまっている所があれば、できる限り現地へ赴いて、流しそうめんの楽しさを知っていただきたいと思います。お店を出して来てもらうという方法もあるかもしれませんが、僕自身は、色々な所に行って交流することもやりがいに繋がってますから、引き続き“出張流しそうめん“を続けたいですね。
流しそうめんの“プロ”としてメディアへの出演や流しそうめんグッズの監修なども手がける上田さん。9月までは忙しい日々が続くそうですが、バイタリティの源にあるのが、増え続ける京都の放置竹林を何とかしたいという思い。今後の活躍を期待します!
■■INFORMATION■■
世界流しそうめん協会
http://nagashisoumen.com/
NPO法人 日本農林再生保全センター
http://jafrec.org/index.html