故郷の魅力を人に誇れる、伝えられる、そして故郷を離れたとしても心の支えになる。そういった体験や思い出って、子ども時代にしかできないこともたくさんありますよね。
約17年前「日本一の給食を目指そう!」という取組から始まり、今は、伊根ならではのオンリーワンの給食を通じて伊根町の魅力を次世代に伝える伊根町立伊根小学校を取材!実際に給食を試食してきました! もう、これが絶品で♡
伊根町は給食費・教材費・修学旅行費など、義務教育にかかる費用を完全無償化。観光地としても素晴らしいことは皆さんご存知かと思いますが、実は子育て支援も充実しているまちなんですよ。
伊根小学校のある「伊根町」ってどんな町?
京都府の北部、丹後半島に位置する伊根町。伊根の代名詞とも言えるのが舟屋です。全長約5㎞の伊根湾の海岸に沿って立ち並ぶ230軒もの美しい舟屋の町並みが有名です。この規模の舟屋が残っているのは日本でも伊根だけ。
伊根湾は湾の入口にある青島が防波堤の役割を果たしているので風の影響を受けにくく、しかも日本海にありながら湾が南を向いているので海がとても穏やか。水際ギリギリのところで舟屋が建ち並ぶのは奇跡の地形だからなんですね。
伊根小の教室からの絶景。美しい海と青島、舟屋が見えました。映画のロケ地にもなりそうなロケーションに感激♡
伊根の舟屋について詳しくはこちらの記事をチェック▼
伊根小学校給食は地産地消を極めた手作りの味
今から17年程前、職員向けの給食研究発表会が行われ、その時に掲げられたスローガンが「日本一おいしい給食でたくましい伊根っ子」でした。
「今はナンバーワンではなくて、伊根ならではのオンリーワンを目指し、地産地消を極めています」と笑顔で語るのは校長の川戸久美子先生。
地産地消の考えを積極的に学校給食に取り入れる動きが全国各地で高まっています。しかし、学校給食では安心安全な食材を人数分、現実的に供給できるしっかりとした体制が重要です。さらには、限られた調理員の人数で調理しないといけません。
「全校児童数が56名という小規模な学校だからこそ、地産地消を極めた手作りの味を給食で提供することができると思います」(校長先生)
日本一、漁港から近い小学校!?だから、鮮度抜群の多種多様な魚が食べられる
美しい海と豊かな漁場に恵まれている伊根小。学校のすぐ近くに漁協があるので多種多様な魚が給食メニューに並ぶそう。なんともうらやましい限り!!
「漁協に直接注文して魚を仕入れています。定置網で捕れた旬の魚をすぐさま下処理し、大きな冷蔵庫で保存してくださるので、新鮮な旬の魚を給食で食べることができます。塩焼き、照り焼き、西京焼き、フライ、天ぷらなど多彩な魚料理に大変身。カマスの天ぷら丼とかイワシのかば焼き丼(写真)など絶品なんですよ。漁協が目と鼻の先にある小学校だからできることかもしれませんね」(校長先生)
月に1度、伊根の食材尽くしの給食「いーねランチ♪」
取材日は、伊根町の食材をふんだんに使った月に一度の「いーねランチ♪」の日。献立は、黒米ごはん、ツバスの照り焼き、かぶの即席づけ、さつまいものすり流し汁、柿。
「地元食材は日頃から給食で食べていますが、毎日食べていると意識しづらかったりするので、月に1回『いーねランチ♪』を実施し漁師さんや生産者さんたちの顔を思い浮かべてもらう。そんな狙いがあります」そう語るのは栄養教諭の改田佑実(かいだ ゆうみ)先生。
お魚が美味しいのはもちろんのこと、地元の農家さんが育てる野菜はそのものの味が濃厚。魚も野菜も素材の味を生かした献立を意識し、塩分はちょっぴり控えめに仕上げているんだとか。
地産地消に加えて、手作り&作りたての味わいにもこだわっているという伊根小の給食。
さつまいものすり流し汁は、サツマイモをミキシングしてポタージュのようにしてから、かつお出汁で仕上げます。滑らかで上品なすり流し汁は料亭のお味に匹敵するほど!
実際に給食を試食しましたが、味付けに物足りなさはなく、驚きの美味しさでした♡
そのほか、あんこは小豆から焚き、よもぎ団子はヨモギの葉を摘むところから、イチゴジャムは農家さんのところへイチゴを摘みに、パンも自家製で焼き立てを提供、さらにはアレルギー除去まで……。
手間暇惜しまずに安心で美味しい給食を追求する調理員さんたちの愛情が伝わってきますね。
伊根小のユニークな食育の取り組みをご紹介
地元民も大注目の伝統行事「魚の食べ方コンテスト」
伊根小のユニークな食育の取り組みをご紹介します。年に1度の恒例行事「魚の食べ方コンテスト」はアジの旬を迎える6月に行われます。なんと何十年も続く、名物行事なんだとか。
コンテストでは、尾頭付のアジの塩焼きをどれだけきれいに食べることができるかを競います。
審査基準は、頭からしっぽまで骨がつながっているか、頭の上にある美味しい部分「猫知らず」(猫も知らない美味しいところという意味があるそう)まで食べることができているか、この2つ。給食時間の20~25分の間に1~6年生までの児童全員がチャレンジします。
まず学年代表が1名ずつ選ばれ、そこからその年の伊根小学校のベスト3を決めるそうです。
子どもたちは毎年、真剣そのもの。家でも練習を重ねコンテストに挑みます。代表になれなかったら悔しくて涙する子どもの姿も……。
「この時期になると、保護者も漁協の方も先生もなんだかそわそわしますね。コンテストが近づくと、どのくらいのサイズのアジがいる?と漁協の方が気にしてくださったり、ご家庭ではコンテストに向けて魚の食べ方を練習してくださったり……と、地域ぐるみで子どもたちを大切にされているんだなと感じます」(改田先生)
代表者の骨を見ると衝撃!頭と骨だけで漫画の世界でしか見たことありません!!
「普段の給食で尾頭付の魚がでると、『これはコンテストですか?』と子どもたちにちょっぴり緊張感が漂うこともありますね。(笑)『骨が折れても大丈夫だよ』と言ってあげるとホッとする、そんなところも愛おしいですね」ほっこりするエピソードも改田先生が教えてくれました。
まだある!ユニークな取り組みが盛りだくさん
6年生になると年に一度、美しい姿勢で昔ながらの食事スタイル一汁三菜をいただく「お膳給食」体験を実施。
海外の食文化に触れることができるオリパラ給食。
読書週間献立は物語の世界に出てくるメニューを再現。ハリーポッターの秘密の部屋のシェパーズパイは大好評だったそう。
「給食は楽しいことも大事だなと思います。ただ食事として捉えるだけじゃなくて、どんな味かな?と想像を膨らませたり、食べてみたら想像した味と違ってビックリしたりなど、いろんなことを感じ考えるきっかけになればいいなと思っています」(改田先生)
オンリーワンの給食だけにとどまらない伊根小の食育
伊根の伝統保存食“へしこ”作り体験
伊根町を中心に丹後地方で古くから伝わっている発酵食品「へしこ」は、サバやアジ、イワシなどを長期間にわたって米ぬかと塩で漬け込んだ保存食。秋から冬に漬け込まれ、10か月ほど寝かすと食べごろになるんだとか。
へしこ作り体験も伊根小の恒例行事のひとつ。地域の方をゲストティーチャーに迎え、4年生が体験します。なんと出刃包丁でサバの下処理から本漬けまで全行程チャレンジ!!
もちろん、作ったへしこは1年かけて給食で味わいます。食べやすいパスタ、チャーハン、ピザなど多彩なメニューにアレンジされ出されます。伊根小HPには分かりやすくまとめられたレシピもご覧いただけますよ~。
児童の皆さんに好きなメニューを聞いてみたところ「へしこパン、パスタ」がダントツで人気でした。
とある転校生の男子児童さんにお話を聞くと「伊根に引っ越してきてから魚がとても好きになった。好きなへしこメニューは、へしこパン。チーズとよくあって美味しい。初めてへしこを食べたときは、食べたことない味で驚いたけど、もっと食べたくなる味だった」と教えてくれました。
修学旅行は2泊3日!京都の料亭で食育授業も
今年はコロナ禍で行先が変わったようですが、例年は奈良や京都市内を2泊3日巡る修学旅行。ちょっぴり期間も長いですよね
「食育に繋がるプランを大切にしています。京都の料亭で料理長から和食についてお話を聞いて、そのあと季節の和食料理をいただくのが恒例なんですよ」(川戸校長)
伊根町観光協会で配付中!伊根小の生徒さんお手製ガイドブックも
伊根町はへき地なので、人と触れ合う機会が少なかったり、コミュニケーション能力が弱かったりといった課題も。
そういったところはタブレットを活用し、他校とオンライン交流会をしたり、またリーフレットの制作および観光案内ガイドを行ったりと、しっかりと学校で取り組みます。
「無いことや少ないことを我慢するではなく、工夫する」ということがへき地教育では大切なことの一つと伝えているそうです。
伊根小では3~6年生になると伊根の魅力をPRするためリーフレットを制作します。すぐ近くの観光協会で絶賛配付中です。実際に、伊根を取材して作られているんですよ!
伊根グルメや素晴らしい景色、伝統・行事など、伊根を知り尽くした子どもたちがピックアップした情報はとても貴重なもの。見応え抜群です!!
学校の前は舟屋がずらりと並ぶ観光地。コミュニケーション能力向上のために、伊根の観光客にリーフレットを見せながら見どころを紹介します。
「地域のことを全然知らない人に伝えるということはとても学習が深まる機会です。コミュニケーション能力を付ける以外にも、わかりやすく表現する、書く、伝えるといった力が身に付きますよね。さらには観光案内を通じて、子どもたちが地域に誇りを持ち、地域を大切にしようという気持ちが育まれます。同時に、取材へ行ったら必ず地域の課題もしっかり聞いてくるように指導しています。伊根では進学や就職を機に地元を離れる人が多いのが現実。都会にいたとしても、故郷を守りたい・助けたい、なにか応援する方法はないかな?と考える気持ち、そこを育てることが一番大切です。いいところも、わるいところも両方知っているのが、故郷を本当に愛する気持ちだと思っています」(川戸校長)
伊根小の給食献立作りに携わって3年目の改田先生。「素晴らしい食育の取り組みが代々受け継がれてきたこと、そして寄り添ってくれる地域の方や生産者さんの理解があるからこそ、いまの伊根小の給食が実現できるのだと思っています。地域一丸となって大切にされてきたものを次の世代にしっかりと繋いでいけるように頑張ります。給食が故郷のことを思い出すきっかけになればうれしいですね」(改田先生)
取材を通じて、子どもたちの食育に力を注ぐ伊根の方々の熱意に深く感銘を受けました。この記事が伊根の魅力をもっともっと深く知りたくなるきかっけになれば幸いです!そして、ぜひみなさんも改めて地元に目を向けてみてください♪
★伊根小学校 へしこレシピ👇
http://www.inesyou.sakura.ne.jp/inekkoresipi-hesiko.pdf
★伊根町の美味しいものがズラリ!オンラインショップ👇
https://inekankou.stores.jp/
★伊根町への移住相談
http://www.town.ine.kyoto.jp/kurashi/sodan/1445931008634.html